生前葬とは

編集=山田 賢人

生前葬とは、本人が生存しているうちに本人の意思により行われる葬儀です。基本的な考えとして「生きているうちに、自分がお世話になった人や縁ある人を招いてお礼を述べる」ために行う人が多いようです。

歴史をさかのぼると、江戸時代に生前葬を行ったということが記されている書物があります。その葬礼も棺や香花の類まで用意を整え、本人は白装束で棺に入り、実際和尚に読経を上げてもらうという本格的なもので、埋葬される直前に棺から出てきたそうです。

生前葬の特徴

生前葬は、「死」を自覚することが前提となります。生前の告別式と死後の葬儀の間には、時間的な隔たりはありますが、広い意味での葬儀として一体で捉える必要があります。

生前葬の後、本人が死を迎えたときは、残された家族や関係者だけで葬儀を行います。その際、友人、知人には死亡通知状などを送り、社会的「死」の手続きに変えます。

生存葬の意義としては、大きく分けて2通りのパターンがあります。

一つは、自らの生存中にゆかりのある人や世話になった人を招待し、別れや礼を言うために行なう葬儀です。

「生きているうちにもう一度会いたかった」という残念な思いを抱き、多くの友人や知人の葬儀に出席してきた高齢者の人は、特にこの傾向が強いようです。また、病気などで死期を告知された人が、元気なうちに自分の姿を周囲に見せておきたいと、生前葬を行う場合もあります。

もう一つは、「仕事」における人生の幕を閉じ、残された人生を楽しむための「リタイヤ宣言」として行うパターンです。

退職を機に帰郷、都会を離れてスローライフや趣味に生きることを決めた人が、最初の人生で世話になった友人や知人に別れを告げると共に、新しい人生の出発を祝ってもらう趣旨で行います。

どちらも、本来なら出席できるはずのない自分の葬儀に、喪主あるいは主催者として参加することが可能なため、自分の思い描く方法で葬儀を行うことができます。

そのため多くは、自らの愛用した物を多用した葬儀であったり、趣味を前面に押し出したりと、一般の葬儀とは異なるイベント的な葬儀となる場合が多いようです。

形式は多種多様にわたり全く普通の葬儀と同じであったりパーティー形式であったり、また、自費出版の自分史を配るなど、さまざまです。 しかし、本人が本当に亡くなった後も、遺族が再び葬儀を行うこともあります。

その際、多くの人が疑問を抱くのが、香典についてです。生前葬の場合、主催者の考え方もさまざまです。生前葬の主旨によっては、会費であったり香典であったりしているようです。表書きは「御花料」「御香典」が適当とされています。

また、生前葬には「長寿儀礼」の要素が含まれている場合もあるようです。長寿儀礼とは、生まれ変わることを目的とした通過儀礼です。擬似的な「死」を通して、これまでの人生の重荷を下ろして気分を一新し、新たな人生のスタートを切るという考え方です。

生前葬の認知度

少々、古いデータになりますが、東京都生活文化局が行った「葬儀にかかわる費用等調査」の結果によると、葬式についての新しい考え方として「生前葬」を知っている人は全体で62.5%。うち女性が67.7%、男性が57.7%でした。

その一方で生前葬についてどう思うかでは「関心がない」「考えたことがない」が全体の約7割を占め、「是非やってみたい」「やってみてもよい」を併せても1%台と極めて少ない数字でした。

ただし、これから少子高齢化が進むと、計算上では4人の親を2~3人の子供が葬送しなければいけない時代になるといいます。人が死を迎えるまでには長期介護で家族が疲れ切ってしまうケースも多く、葬式はさらに家族の経済的、肉体的負担を増やすことになります。

そこで、生前葬を行う人々は、生前に別れを済ませ、遺族の負担を減らしたいと考えています。生前葬の認知度は高まったものの、実際に行う人たちは少数に限られますが、今後はそうした理由を含めて生前葬を行う人も増加すると予測されます。

その一方で、有名人が行うことで生前葬への認知度が向上しています。

良く知られるところでは水の江瀧子さん、漫画家の赤塚不二夫さんなどが挙げられます。
特に喜寿を超えたのを機に執り行われた水の江さんの生前葬では、俳優の森繁久彌さんが葬儀委員長となり、司会は永六輔さんなどと豪華な顔ぶれ。

生きている本人を前にユーモラスな弔辞が次々と披露され、笑いが絶えないにぎやかな「お別れ」となったといいます。最近では、ビートたけしさん、解剖学者の養老孟司さんらが、生前葬を行ったことで話題を集めました。

「華々しい社交界だからこそ」という、見解もありますが、悲しみだけではなく「故人」とともに過ごした喜びを演出するという意味では、意義のある葬儀といえるのではないでしょうか。

本当の「死」を迎える前に

生前葬が徐々に浸透するにつれ、墓地の売上げが伸びているようです。それは墓地でも「寿陵」といわれる墓地で、「寿陵」とは、生前に建立する墓のことをいいます。

生前墓を建立する人は生前葬と同じ理由で、「家族や親族に手間をかけさせたくない、金の面で迷惑をかけたくない」や「事前に自分の好きな場所を選ぶことができる」などの理由が多いそうです。

また、墓は非課税で相続税がかからないというメリットもあります。しかし、寿陵を受け付けていない霊園や寺院墓地もあるので、事前の下調べが必須となります。

生前に墓を建てることに、少し違和感を抱く人もいるかもしれませんが、死を意識することで長生きができ、縁起がいいとも言われています。

従来は後ろ向きなイメージが強かった生前葬ですが、メディアで取り上げられ、少子高齢化社会、核家族化により、自分の葬式について真剣に考える人が増えています。

明るい生前葬を行うことで、思い残すことなく余生を楽しく過ごすことができ、必ずやってくる自分の死に対して、少しでも前向きにとらえることができることは決して悪いことではないはずです。

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この記事の監修者渡井 健次郎(わたい けんじろう)

葬儀業全般に関わるプロデュースを行う有限会社芋忠本店の代表取締役。地域の古いしきたりを重んじながら、新しい時代の葬送文化を手掛ける。[詳細プロフィール]

今回の記事はいかがでしたか?

  1. まだ死んでないのにお葬式?正直、する人の気持ちが分からないな

    ペン知ルくん

  2. ペン知ルくんは、まだ若いから理解できないかもしれんな。だが、高齢者にとっては死後、どういった葬式が行われるか不安に思う人も多いようじゃ。加えて、遺族に迷惑をかけたくないという気持ちも生前葬を行う大きな原因となっている。ワシも考えていい年齢じゃな

    本ドウさん

  3. またそんなこと言って!本ドウさんはまだまだ若いですよ。でも、テレビの影響もあって生前葬への関心も高まってますよね?

    ハルちゃん

  4. 確かに有名人が行うイメージが強かった生前葬ですが、一般人でも徐々に行う人が増えているらしいですね

    ナビプロさん

  5. それでも、まだまだ生前葬を行うこと事態に否定的な意見を持つ人もいるようじゃ。行う際は参加者の気持ちを考えた案内をする必要があるな

    本ドウさん

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